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退職金の受け取り前に準備しておきたい「ライフプランニングシート」とは?

マネー
2018.07.18
退職金の受け取り前に準備しておきたい「ライフプランニングシート」とは?

セカンドライフ以降の生活設計を考えるうえで、50代の過ごし方はとても重要です。

老後資金の重要な柱になるのが退職金です。退職金をいくらもらえるか、把握できないケースが意外に多いのです。受け取り方法も、一括だけでなく、公的年金と同じように分割でという方法などもあり、その選択によって資金計画の立て方も変わってきます。

「定年間際になって、はじめて受け取れる退職金や公的年金の額を知る方が意外と多いのです。そのタイミングで『生活資金が足りない』と気づいても、できることは限られてしまいますが、前もって準備をしておくことで安心した暮らしをおくることができます。早ければ早いほどよいですが、50代になったタイミングで、老後の暮らしについて考えるのが好ましいです。セカンドライフのプランを立てたときに、資金が足りない場合にリカバリーしやすいことが最大の理由です」(風呂内さん)

こう語るのは、年金制度やセカンドライフに精通するファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢(ふろうちあや)さん。『退職後のライフプランの考え方』について全7回にわたり伺いました。シリーズ第1回は、「退職金を受け取るまでに何をすべきか」についてお届けします。

実際にもらえる退職金の額は?

まず、おおよそいくらの退職金を受け取ることができるのか把握してみましょう。

会社から受け取る退職金がそのままのこるわけではなく、そこから引かれるものがあります。その1つが税金です。
通常の所得税とは異なり、一時金で受け取る場合に退職所得にかかる税金を減額する優遇税制が適用されますが、それでも一定額を超えると税金が加算されます。
税金は、受け取った退職金から退職所得控除額を差し引いて、それを上回る金額の1/2に対してかかります。

退職所得控除額は、下記の計算式によって求められます。

退職所得控除額の計算式

(1)勤続20年以下の場合
40万円×勤務年数
ただし、80万円に満たない場合には80万円が控除額となる

(2)勤続20年を上回る場合 800万円+70万円×(勤務年数-20年)

覚えておきたいPOINT!
退職金のうち課税対象となる金額=(退職金総額-退職所得控除額)÷2

※課税対象となる金額によって所得税率は異なり、ほかの所得とは分離して計算します。


税金のほかに、金額が大きいものとしては、ローンの残債が考えられます。特に住宅ローンは、退職金を充当することを前提とした支払い計画をたてている人も多いはず。

ローン契約締結時にはわかっていたはずが、その時点では、退職後のことまでぴんとこなかったのではないでしょうか。実際に支払うタイミングになって、ご本人が想定していた以上にローンがのこっていた、というケースが実際に少なくありません。

退職金はセカンドライフ設計の大きな柱です。受け取る額を把握するだけではなく、手元にいったいどれぐらいのこるのか、を正確に把握しておきましょう。

ライフプランニングシートを活用して老後の計画を

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手元にのこる退職金額がおおよそ把握できたら、ライフプランニングシートをもとに、セカンドライフの資金計画をシミュレーションしてみましょう。ここで重要なことは、必要となる総資金と、定年退職までに用意できる資金をおおまかにでも把握しておくことです。

仮に、必要な資金を計算したら、どうやりくりしても1,000万円足りないことがわかったとします。この場合、退職まで10年をのこした時点でわかっていれば、年100万円貯蓄すればいいという結論になります。

これがのこり5年を切った段階になると、貯蓄額は年200万円にふえます。ちょっときついものの何とかなるかもしれません。しかし、のこり2年となると年500万円の貯蓄をしなければならないわけで、後が詰まってくるほど可能性が狭まることがわかると思います。

何とかなるだろうとおおらかに構えていると、結局、資金づくりのための準備機会を逸し、悠々自適なセカンドライフを夢見ていたのに定年延長しか選択できないといったことになりがちです(もちろん望んだ定年延長は素敵な選択です)。自分らしい老後を送るためにも、早めの資金計画をぜひおすすめします。

具体的なライフプランニングシートの活用法を見てみましょう。まずはざっくりでもいいので、資金の出入りのバランスを把握し、シートに書き込んでいきます。手順は以下のとおりです。

1.入金予測を把握する

入金で大きなものは退職金、預貯金、公的年金、年金型保険、定年延長・再雇用を選択した場合の給与です。
公的年金、年金型保険など継続して受け取れるお金をベースに、足りない部分に退職一時金や預貯金を取り崩していくことになります。
公的年金額については年金事務所に、受け取れる保険額については保険会社に、定年延長・再雇用の規定については勤務先に問い合わせましょう。

2.出金予測を把握する

出金は基本的に生活費が中心です。現時点で何にいくらぐらいつかっているかを一度、洗い出してみるとよいでしょう。その中で、定年後も継続するものだけを抜き出して基準となる生活費を算定します。通帳の入出金明細を見ながら整理するとイメージしやすくなります。その際の指針を風呂内さんはこのようにアドバイスします。

「通常、定年退職すると現役時代にくらべて支出額は減ります。食費や光熱費は大きく変わりませんが、ローンや子どもの教育費がなくなるからです。逆に、娯楽費や医療費は3割増しや倍増することもあるため、これらを差し引きすると現役時代の7割ほどに落ち着くのが一般的です。もちろん、ローンや教育費がのこっていれば、この限りではありません」(風呂内さん)

定年退職したからといって生活費を切り詰めるばかりではなく、せっかく自由な時間がふえるのですから、現役時代にはできなかったことをやるという考え方がよいと、風呂内さんはつづけます。

「支出の内訳を把握するのも重要ですが、できるだけやりたいことを基準にライフプランニングシートを記入することをおすすめします。たとえば、「65歳になったら海外旅行にいく」などを記入することで、より必要な金額が明確になり、そのために60歳までにどのくらい貯蓄があればいいのか? と逆算することができます。ですので、50代になったタイミングでライフプランニングシートを記入することが、時間的な余裕も考えるとベターといえます」(風呂内さん)

風呂内さんのいうように、資金が別途必要になることもありますが、セカンドライフになったらやりたいことを実現するために、50代のうちにがんばって貯蓄に励むというポジティブな動機にすることもできるのではないでしょうか。

3.ライフプランニングシートに入出金額を書き込む

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おおよその入出金額が把握できたらライフプランニングシートのプラスとマイナスの欄に該当する金額を書き込んでいきます。

60歳を起点とし、プラス欄には公的年金や保険など継続して受け取る資金を年額で、退職一時金や貯蓄などのまとまった資金は60歳時点で予想される総額を記入。マイナス欄には、生活費やローンなどの支出を同じく年額で記入。プラス額からマイナス額を差し引いた合計が、その年の年末の資金残高になります。

翌年、61歳になると、定期的に受け取る資金はプラスされますが、貯蓄や退職一時金などまとまった資金が加算されることは基本的にありません。このため、合計金額は年々目減りしていくことになります。合計金額が0、もしくはマイナスになると、資金が尽きたことを表します。

さて、ここからが重要です。資金が尽きるのをなるべく遅らせることを考えましょう。人生100年時代といわれますし、日本人の平均寿命・余命から考えると、少なくとも90歳までは見すえる必要があります。ここで打てる手は大きく2つ。50代のいまのうちに貯蓄額をふやす何らかの新しい手段を講じるか、60歳以上も働きつづけるかです。

基本的に、多少、資金に余裕がある人でも、60歳から65歳までは何らかの収入を得る手段を確保することをおすすめします。風呂内さんもこのようにアドバイスします。

「公的年金の受給年齢は65歳へと段階的に引き上げられています(現在男性57歳、女性52歳より若い人は完全に65歳からの受給)。60歳で定年退職した場合、65歳までは支出する一方になります。この期間に、たとえ、年100万円でも200万円でもプラスの収入があることで、後々に大きな違いを生みます」(風呂内さん)

資金に余裕ができるようになると、いろいろ可能性もひろがります。
たとえば、公的年金の繰り下げを選択する方法です。65歳から受け取れることになっている公的年金の受給を、先送りにすることでメリットが生まれます。繰り下げることで、期間に応じて受給額が加算されていくのです。
「繰り下げは1カ月単位で可能です、1カ月繰り下げるごとに受け取れる金額が、0.7%加算されます。1年間で8.4%に達するため、大きな数字です。70歳まで繰り下げすることができるため、最大で元の金額の42%までふやすことができます。反対に、65歳になる前に前倒しして公的年金の繰り上げ受給を受けることもできますが、この場合は、受給額が1ヵ月前倒しとなるごとに0.5%ずつ減額されます」(風呂内さん)

つまり、体力に余裕があるなら、できるだけ長く働いて公的年金の受給を先送りすることで、その先5年、10年の資金に余裕を持たせることもできるようになるわけです。

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まとめ

退職金の受け取り額がおおよそいくらになるかをあらかじめ確認しておきましょう。また、受け取った退職金が満額、手元にのこるとは限りません。退職金には、一定の計算式で課税額が減額される仕組みがありますが、額によっては所得税がかかる場合があります。

また、定年退職後にも住宅ローンなどがのこっている場合、退職金による返済をあてにしていると資金計画に大きな影響が出ることがありますので注意しましょう。受け取れる退職金の額に目安がついたら、ライフプランニングシートを作成することで、セカンドライフの生活設計をシミュレーションしましょう。

50代は、老後資金づくりの不安を解消し、自分らしいセカンドライフを手にするためのラストチャンスともいえる時期です。この時期にしっかり資金需要を見通し、必要な生活基盤を確保するための準備を賢く進めましょう。

ファイナンシャルプランナー 風呂内亜矢(ふろうちあや)さん
1978年生まれ。岡山出身。大手電機メーカー系SIerに勤めていた26歳のとき、貯金80万円で自宅用としてマンションを衝動買いしたものの、物件価格以外にも費用がかかることを知り、あわててお金の勉強と貯金を始める。現在は自宅を含め夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ている。一方、当初のマンション購入をきっかけにマンションの販売会社に転職。「完済年齢を把握する」「不動産と重複する保険はかけない」など、自身がマンションを購入したときの体験を交えた営業が顧客の共感を集め、年間売り上げ1位の実績を上げる。2013年、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在はテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。

(ライター:太田聡、写真:サムライト)

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